Project Story

2024.04.01
第1回
第1回
岸辺露伴 ルーヴルへ行く

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Project Story#17

映画の世界観を形にする「モノづくり」

全2回連載

2023年5月26日に公開されたアスミック・エース配給作品『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』。テレビドラマシリーズ「岸辺露伴は動かない」のキャストとスタッフが再集結し制作されたこの映画は、荒木飛呂彦による『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』が原作。フランスのルーヴル美術館でロケ撮影が行われたことも相まって大きな話題となり、大成功を収めた。

原作やドラマからの熱いファンの思いを繋ぎ止めるため、グッズやコラボレーション企画も独自のコンセプトが設定された。ストーリーの鍵となる“黒”や、主人公の岸辺露伴が纏う独特のビジュアルをベースに、本作ならではの商品が考案された。商品化の窓口を担当したコンテンツ販売部の有吉篤史と井ノ口智裕、タイアップを担当したマーケティング推進部の林祐美子に商品化に関する話を聞いた。

『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』関連のグッズを見ると、どれもシックなトーンでまとまっていて、まるで美術館のグッズのような印象を受けました。グッズ制作にあたってどのようなコンセプトを固めたのでしょうか。

井ノ口:本作での大きな要素として、原作が『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズという、歴史も長くてファンの方も非常に多いコンテンツという点があります。それに加え、ドラマ版が3年に渡って放送されていたので、その世界観を映画でもしっかり踏襲したいという思いがありました。さらに映画ならではの要素として、ルーヴル美術館と、劇中にも出てきた黒というモチーフ。これらを大切にしながら商品展開をしようと考えていきました。

ルーヴル美術館、黒はまさに本作の大きなテーマです。

井ノ口:商品化チームが動き始めたのは2022年の秋ごろで、映画の撮影が始まっていたタイミングでした。脚本や設定回りに加え、プロデューサー陣から撮影現場の様子を教えていただきながら、企画を進めていきました。本作のグッズ制作に関して一番大きなトピックとなったのが、主演の高橋一生さんからもアイデアをいただいたことですね。

キャストの方がグッズ制作に参加するというのは珍しいですね。

井ノ口:私も初めての経験でした。高橋さんがドラマ『岸辺露伴は動かない』から岸辺露伴という役を大切に重ねられている部分もあったからなのかもしれません。「こういうこともできたらいいですね」というふうにおっしゃっていただいたことがヒントになり、実現したものもあります。何点かあるのですが、やはり目玉は「S.H.Figuarts岸辺露伴」フィギュアです。

表情やポーズなど、高橋さんが演じている岸辺露伴そのものですね! 

井ノ口:そうなんです。高橋さんにスタジオにお越しいただき、360度ぐるっと囲むようなカメラでCGデジタルスキャンを行いました。表情や手のポーズもいくつかのパターンを高橋さんからご提案いただき撮影したのですが、どれも高橋さんにポージングしていただき、それを撮影しています。昨年予約を受け付けて、この春にお客様にお届けできる予定となっています。

フィギュア以外にも、『岸辺露伴』シリーズならではといったグッズが多いですね。

井ノ口:モチーフとして多かったのが、露伴のヘアバンドのデザインから着想した商品ですね。原作からすでに印象的なアイテムでしたので、デザインをそのまま活かしたラバーバンドや、トートバッグやカップスリーブなど他の商品のデザインとしても活用しました。ヘアバンド関連のものは発売されたときにファンの方が喜ばれている様子がSNSでも見られたので、作ることができてよかったなと思いました。

露伴は人気漫画家なので、Gペンをモチーフにしたグッズは本作ならではですし、ブックカバーやノートという一般的なグッズも途端に意味を持ってきますね。

井ノ口:どのモチーフも露伴の象徴ですよね。実写映画の関連グッズ展開というとポスタービジュアルや場面写真を使うことが多いんですが、本作はいろんなモチーフを活用できたので、よりバラエティーに富んだ展開になりました。原作、ドラマと展開を重ねてきた中ですでに認知度があったモチーフだったので、発売時にファンの方たちが喜んでくれることが宣伝効果になったのも大きかったです。

カフェやレストランでのコラボメニューもオリジナリティがありました。

井ノ口:コラボメニューはタイアップチームが主導で動きました。“黒”という映画のモチーフを使用して、「銀座 伊東屋」さんでは「黒いレモネード」という商品展開を一緒に発信させていただきましたし、「俺のフレンチ」さんでも“黒”をテーマにしたメニューを開発していただきました。

林:どのタイアップも、『岸辺露伴』の世界観を大切にすることを心がけました。すでにある作品世界を商品に落とし込むって実は結構大変だったりはするんです。ですが先方の会社さんにも会社様に『岸辺露伴』ファンがいらっしゃることが多かったのも、こういったコラボができた要因だったと思います。世界観を大事にしたい!という双方の思いがどんどん素敵な企画を生んでくれました。

引用:銀座 伊東屋 公式X(@Ginza_Itoya)
※現在は販売を終了しております

グッズやタイアップのターゲット層は高めだったのでしょうか。

井ノ口:ドラマ版からのお客さんも多かったですし、ルーヴル美術館という舞台に興味を持っていただけるという意味でも、シックだったり落ち着きのある展開になったのだと思います。ルーヴル美術館とのコラボは残念ながら難しかったのですが、映画のメインビジュアルが1枚でも様になるようなビジュアルだったので、マグネットやポストカードなど美術館グッズのような展開も行うことができました。

井ノ口さんが商品関連の窓口になっていたそうですが、苦労したもの、やりがいがあったグッズというと?

井ノ口:やはりフィギュアはすごいチャレンジングな企画でしたね。これまでやったことがなかったので、集英社様やメーカー様へのご相談に始まり、撮影や監修も時間をかけてやりました。なにより私としても楽しみながら取り組んでいました。

この出来栄えを見ると相当に細かく監修されたのだろうなと思います。

井ノ口:衣装や小物のデータを集めたり、サンプルが出来上がると、私たちアスミック・エースもそうですし、集英社様、高橋一生さんの事務所様など各所にチェックをお願いしていきました。原作の荒木飛呂彦先生にも集英社様経由で企画の段階からご確認をいただいたのですが、とてもご理解いただき、確認作業も丁寧にお戻しいただきました。商品発売のリリースを発表すると、X(旧Twitter)でもトレンド入りをしました。販売が始まると、想像していたより多くの予約が入りました。かなりの反響で私としてもうれしかったですね。

井ノ口さんは映画の商品展開にどんな意義を感じられますか。

井ノ口:私が最近感じているのは、関連グッズを手に取ってもらったり買っていただくことで、お客様が映画の楽しみ方をどんどん広げてくれているんだなということです。今はSNSで発信してくださったりもするので、映画の公開だけに留まらず、いろんな体験ができる。商品展開にはそういう余白を膨らませる要素があるのかもしれないと思っています。

有吉:実写の映画ってどうしても関連グッズを出すのが難しいんです。例えば洋画大作のキャラクターに特化したような実写作品(スターウォーズやマーベルシリーズなど)では関連グッズが比較的たくさん出ますが、それ以外の特に邦画は私の経験でも少ないです。弊社配給作品では、『カメラを止めるな!』(共同配給)がキャストの写真を使った商品を比較的多く出せた作品でしたが、当時まだ無名だった出演者さんが多かったのと、作品が広がるためならという点を出演者・監督他の皆様が非常に積極的になってくださったおかげでできたものでした。『岸辺露伴は動かない』シリーズはすでに誰もが知る漫画原作のアニメ化もされている大型IPですが、他作品事例からもやはり実写作品となるとこういう作品でもタイトルロゴ他数点のデザイン素材ぐらいしか使えないことが多いんです。けれど今回は『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズから漫画原作やテレビアニメ等の関連グッズが非常に多く出ていることや、なにより主演の露伴演じる高橋一生さんがこういったグッズ化を面白がってくださったことはとても大きかったと思います。高橋さんのグッズというよりも、「岸辺露伴のグッズを出しましょう」とご本人が楽しんでくださったので。

関わる皆さんの作品愛が大きく、普通のものではなくチャレンジしたいという思いをくすぐられるようなところもあったんですね。

有吉:そうですね。とはいえ先ほど述べたキャラクターに特化したような洋画大作実写作品などに比べると圧倒的に関連グッズに使える素材は少ないので、取り組んでいただけるタイアップ先の企業様やライセンシー様がかなり工夫してくださって、作品の世界観をグッズに落とし込んでくださったおかげだと思います。

<発売情報>
「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」Blu-ray/DVD
2024年7月3日(水)レンタル開始
2024年7月26日(金)発売

発行・販売元:NHKエンタープライズ 
©2023「岸辺露伴 ルーヴルへ行く」製作委員会
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
▼詳細はこちら▼
https://www.nhk-ep.com/special/rohan/