Project Story

2022.11.01
第1回
第1回
チェリまほTHE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~

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Project Story#15

本間プロデューサーらが語る映画化への思い

全2回連載

インタビュー・文:大曲 智子

2020年10月から12月にかけてテレビ東京で放送された深夜ドラマ、『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい(通称:チェリまほ)』。豊田悠による同名のコミックを原作に連続ドラマとして放送され、登場するキャラクターたちの愛と成長の物語が視聴者の胸を打ち、その人気は国内外にまで及んだ。

そんな『チェリまほ』が、『チェリまほ THE MOVIE 〜30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい〜』というタイトルで映画化。2022年4月に公開され、こちらも大ヒット。宣伝にあたってはこの作品らしく細やかな気配りを意識したという。企画から携わった、アスミック・エース事業企画部の本田純子。映画『チェリまほ THE MOVIE』で宣伝プロデューサーを務めた、アスミック・エース映画宣伝部の上地智子。そして『チェリまほ』のドラマを立ち上げ、映画版でもプロデューサーとして携わったテレビ東京の本間かなみ氏にも特別に参加していただき、配給宣伝の裏側を語ってもらった。

大ヒットしたドラマ『チェリまほ』が映画化され、こちらもまた大ヒットを記録しました。そもそも映画化については、どの段階で話が上がっていたんでしょうか。

本田:チェリまほのドラマが、20年の10月クールでした。初回が10月9日放送で、最終回が12月25日。放送中から社内でも話題になっていて、最終回を迎える前に、Twitterで日本のトレンド1位、世界トレンド5位になるほど大変な盛り上がりを見せていたので、みんなでチェックしていたんです。これはぜひ映画化の相談をしてみようということになりまして、最初にテレビ東京さんと打ち合わせをさせていただいたのが、11月30日でした。

本間:実は私はその最初の打ち合わせには参加していないんですよね。会社の上の人たちが参加して、ドラマの最終回が終わった頃に、「映画化の話が来てますよ」と聞かされました。そのときはドラマを無事に最後まで届けたいという思いで精一杯で、映画化とかはまったく考えていなかったんです。

ドラマを無事に終えて、映画化のお話を改めて考えることになって、どんな思いがありましたか。

本間:嬉しいなとは思いました。ただ『チェリまほ』はドラマで完結することを目指して取り組んできていたので、それをまた映画にするというのは、はたして、応援してくださった方々の声に応えられているんだろうかと、ちょっと悩んだのも事実ですね。最初は「ドラマの総集編のような映画にしませんか」というお話だったんです。それならドラマから続いているお祭りの一部としていいんじゃないかなと思いました。ですが、ドラマが終わってからもお手紙を送ってくださる方が本当に多かったんですね。私のところにも届くし、風間監督や、メインキャストである安達清役の赤楚衛二さん、黒沢優一役の町田啓太さんのところにも届いていると聞きまして。その方たちに映画を届けるにあたって、どういう形が一番喜んでもらえるんだろうと考えた時に、「安達と黒沢のその後が見たい」という声に応えることが、自分たちにできる最大の恩返しじゃないかなと思ったんです。それでこちらから「総集編ではなく新撮はどうでしょうか」とアスミック・エースさんに相談したところ、ぜひというお返事をいただけたという流れです。

本田:作るのならちゃんと映画として新しいものを作りたいという、すごく前向きで思いのあるお考えをいただいて。そっちの方が素敵ですねということで、このような展開になりました。

本間:原作の豊田悠先生に、映画化についてお話をしに伺ったのですが、先生からも温かいお言葉をいただけました。頑張ろうと思いましたね。

ここからは映画の宣伝プランについて伺っていきたいと思います。ファンの方によって支えられた作品として、どのようなことを念頭に置きましたか。

上地:『チェリまほ』はドラマですでに世界観が確立されていますよね。そしてその世界を、作品に関わる皆さんが大事にされてたっていう部分も大事なので、映画になってもその世界から決して逸脱しない、延長線上にありますよという見せ方をしたいと考えました。その上で、新たな魅力や、新規の方への広め方も考える。多くの方に映画館に足を運んでいただくにはどうすればいいかを考えましたね。

ドラマからずっと応援してる方と、これを機に初めて『チェリまほ』を見てみたいと思われる方がいらっしゃったと思います。

上地:その2軸でやっていこうというのも、最初に決めていましたね。既存ファンの方向けには、映画化を祝福してくださるムードを大切にしたい。そして何より、ドラマからの地続きの物語が見られるっていうところが一番のアピールポイントだと考えていました。新規の方向けにはどうしようかなと思ったのですが、映画のストーリーに、「主人公の安達は触れた人の心が読める」という初期設定を再び盛り込んでくれていたので、ご覧になっていただくだけで初見の方でも楽しめるようになっていた。これはありがたいなと思いました。新規の方が見ようとしたときに、入る余地がないという風にはならないようにしたかったんです。宣伝をする上でも、「映画からでも間に合いますよ」っていう見せ方も、常に意識していましたね。

宣伝プランを作るにあたって、本間さんからは何か注文などされたのでしょうか。

本間:ドラマの世界観を踏襲していただきたいっていう思いが一番大きかったんですけど、私が言うまでもなく、上地さんがすごく真摯にやってくださったので、お任せしていました。

映画化となると、「何か新要素が入ってくるんじゃないか」「好きだった世界が壊されてしまうのでは」という不安が沸き起こることも予想できますが、プロモーションの中で不安を煽るような言葉は言っていなかったですよね。そこがとても印象的でした。

本間:それはドラマからそうなんです。次回予告でもネガティブにハラハラさせるようなPRはせず、基本的には「次回はこんな楽しみがあります」と、見て伝わるようなPR作りを心がけていたんですよ。そういったようなニュアンスっていうのを、映画でも上地さんと色々細かいことを話しながら進めていきました。

私も雑誌ライターとして映画『チェリまほ』の取材記事を書きましたが、安達と黒沢が前半で離れ離れになってしまうことを、公開前に書いていいのか迷ったんです。ですがそこはあらすじとしてすでに明かされていたので、触れていいんだなと。そこはストーリーの肝ではないとわかるだろうし、明かしておくことでかえってファンのみなさんも安心できるのだろうなと思いました。

上地:そうですね。本間さんもおっしゃっていたように、二人に大きな試練がのしかかるというような、煽る感じには見せたくなかったんです。むしろ、より二人の仲がさらに深まるという期待をしていただきたいなと思っていたので、そこは全然隠さなかったですね。もちろん後半での大事なポイントはいくつもあるので、そこは変な意味に取られてほしくなかったこともあり、観た方だけがわかるようにしていましたね。

本間:豊田先生の描かれる原作の世界観をとても大事にしたかったんですよね。自分の肌感覚でしかないんですけど、この作品に関してはあまり煽りたくないという思いがあった気がします。映画になるといろんな解像度が上がって、エンタメ的にもレベルアップして、刺激的な箇所をフィーチャーしていくってよくあることだと思いますし、そういう方法が合う作品もあると思うんですが、『チェリまほ』はそうじゃないなと思っていたんですよね。リリースを出したり、プロモーションをする上でも、とにかくハッピーな世界ということを大切にしていました。

「チェリまほ THE MOVIE」Blu-ray&DVD 2022年11月9日発売

発売元:「チェリまほ THE MOVIE」製作委員会
レンタル販売元:カルチュア・パブリッシャーズ セル販売元:TCエンタテインメント

公式サイト:https://cherimaho-movie.com/
©豊田悠/SQUARE ENIX・「チェリまほ THE MOVIE」製作委員会