【第1回】『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』/シリーズ第2弾ならではの宣伝法

2021.12.20

インタビュー・文:大曲 智子

<全3回>
第一回
第二回
第三回

 

11月5日に全国公開となり、現在も”大ひっと”上映中の『映画 すみっコぐらし 青い月夜のまほうのコ』。2019年に公開された映画第1弾『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』の大ヒットを受けての第2弾であり、(すみっコたちの世界は変わらなくとも)さらなるパワーアップをした映画となった。

前作も今作も、子どもから大人まで楽しめる映画にという思いのもと、約60分という短くゆったりとした時間で綴られるストーリー。再び多くの人に届けるために、「映画すみっコぐらし製作チーム」はどんな施策を考えたのだろうか。全3回に渡って、各スタッフへのインタビューをお届けする。第1回目は、『すみっコぐらし』の原作キャラクターを持つサンエックスの富田様と、アスミック・エースで『映画すみっコぐらし』を担当するアニメ事業部の小野に宣伝についての話を聞いた。

――前作から2年経っての第2弾を公開するにあたって、最初はどのような宣伝計画を立てたのでしょうか。

小野 全体方針を決める中でサンエックスの富田様たちと度々お話ししたのは、やっぱり第1弾が我々もなかなか予想できなかったヒットの仕方だったということでした。 キッズファミリー向けの作品ということは大前提としつつ、大人の方にも刺さって、メディアにも「大人も泣ける」というように取り上げていただいていて。あそこまで話題になったのは嬉しいサプライズでした。

それを受けての第2弾ということで、宣伝的な打ち出し方をどうしたらいいのか、何度もお話しさせていただきました。 前回は「仲間」がテーマで、映画オリジナルキャラクターの“ひよこ?”が出てきたり、すみっコたちが童話の世界に出ていくというようなストーリーでしたが、今回はすみっコたちが暮らす町の中で進んでいくストーリー。とかげとおかあさんの親子のお話などもそうですが、サンエックスのみなさんがこれまで10年間手掛けてきた原作のテーマを隅々に反映した形になっているなと感じました。 前作との違いも感じましたので、「泣ける」という打ち出し方はせず、優しくて温かいストーリーというところを出していこうということになりました。すみっコが持つ本来の良さを伝えることを意識しましたね。


――前回小野さんにお話を伺ったときに小野さんが、「映画の原作はすみっコのキャラクター」だとおっしゃっていて、サンエックスの方たちの思いをちゃんと組んで宣伝にも反映されたんだなという印象があったのですが、サンエックスさんとしては前回を受けて、今回のすみっコの宣伝はどう考えていたんでしょうか。

富田 まず第1作目を作るときに、「60分という時間で子供たちが飽きずに最後まで見てくれるにはどうしたらいいんだろう」ってずっとみんなで考えていたんですね。その結果、すみっコらしさを忘れないことが大事だなという結論になりました。だからすみっコたちはセリフをしゃべらないっていうやり方にしたんですけれど、それが結果的に涙を誘うことになったのかなと。本当に予想外の産物だったんです。実際私たちも作っている時、脚本とか絵コンテVコンテなど全部見ているのに、音が入った瞬間にすごい泣けてしまって、「大変なものを作っちゃった」って思ったぐらいだったんです。

なので、 パート2を作る時は、泣ける映画って言われていることとの戦いだなと思いました。泣かなきゃいけないみたいな感じになってほしくないと思ったので、最初から(アスミック・エースのプロデューサー)竹内さんや小野さんと、「あんまり泣ける泣けるって言わないようにしたいです」っていうお話はしていましたね。

――ビジュアル的にも前回と差別化されていますね。

富田 弊社(サンエックス)のデザイナーや、すみっコのキャラクターデザイナーであるよこみぞゆりさんとも、ビジュアルの差別化はすごく共通認識として持っていました。前回は昼間だったので、今回は夜。ナイトパーティーとか、とにかく綺麗なビジュアルにしようって話していました。

――映画としてのテーマにも差別化を?

富田 そうですね。最初から「魔法と夢」っていう言葉が出ていて。「泣ける映画」と言われないようにしたいし、今後の展開も考えたときに、テーマとして竹内さんからオススメされたのが、「とかげの親子」のこと。でもそれだけだと結局泣けるとかにくっついちゃいそうな気がしたので、「とかげ押しにしないようにしよう」とも言ったり。あとやっぱり「夢という部分を大切に出していきたいですね」っていうのはずっと話してましたね。コロナ禍で何をメッセージでのせたらいいのかなって。 脚本の吉田玲子さんや大森貴弘監督からも色々とアドバイスをいただいて、それで今の形にまとまっていった感じがしますね。「夢」の落としどころもすぐ決まったわけではないんです。どうやってすみっコと夢をうまくくっつけるかっていうのは悩みましたよね、小野さん。

小野 そうでしたね。ただ大森監督のインタビューに立ち会わせていただいた時に、監督がよくおっしゃっていたのが、「ストーリーを考える中で、最初はすみっコの夢を魔法使いが叶えるというストレートな方法も出たけれど、すみっコたちって夢が叶っちゃったらすみっコじゃなくなっちゃう。夢が叶わなくても、夢を持つということがすみっコたちらしさだっていうことに気が付いた。それこそがすごくすみっコらしいメッセージだよね」っていうお話になったとおっしゃっていました。

富田 あと、魔法使いってなんでも叶えられちゃうから夢が何かわからなくて、すみっコたちと出会うことで初めて夢を知るっていう流れも、私たちは点と点でしか言えなかったんですけど、そこを吉田さんや大森監督につないでいただきましたね。


――わん、つー、すりー、ふぉー、そしてふぁいぶという5人の魔法使いたちは、今回の映画オリジナルキャラクターです。

富田 もともと持っていたすみっコの良さを表現する時に、新しいキャラクターってすごくいい作用を起こしてくれるんですよね。サンエックスのキャラクターたちは全体的にそういうところがあるんです。魔法使いたちは作ってる途中で「本当に可愛いキャラクターができたなぁ」って思ってましたね。「きっと“すみファン”が喜んでくださるだろうな」って。ポスターを作る上でもこだわりがあって、キャラクターの数が多くなったので、できる限りすみっコたち5人が主人公として目立つように。そこに新しい子たちがいることも気づくようにと、前後の配置とか、星のキラキラ感とかを、デザイナーがすごいこだわって作っていました。

小野 宣伝としても、ちょっとしたすみっコらしさを大事にしたいと思っていたんですが、公開日が前作と近い時期の11月1週目の金曜日だったので、ポスターの「FRIDAY」の箇所に、前回は“えびふらいのしっぽ”を配置していたんですけど、今回は“あじふらいのしっぽ”にしてみたり(笑)。今回は夜のシーンが凄く綺麗で、背景美術の日野香諸里さんが描かれた絵の力のおかげで、子どもっぽくなりすぎないポスターや予告編にすることができました。

――監督が『夏目友人帳』などの大森貴弘監督で、脚本は『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』などの吉田玲子さん。素晴らしいスタッフ陣が制作に参加してくださって、でもすみっコたちの世界観は変わらないのがすごいなと思いました。

富田 そうですね。個人的な話ですけど、ちょうど映画を作る前に『夏目友人帳』と『ヴァイレット・エヴァーガーデン』も見ていたので、お二人に決まった時はファンとしてすごい嬉しかったですね。お会いしてみたらすごく優しくて、私たちも安心してお任せできました。

――BUMP OF CHICKENの主題歌『Small world』もすみっコの世界観に寄り添っていますね。

富田 BUMPの皆さんも映画の一作目を見ていただだいたようで「感動した」というコメントを頂きとても嬉しかったです。 『Small world』のデモ音源を聞いたときは「すみっコの世界そのものだ」と思って鳥肌が立ちました。 特に2番の最初の歌詞なんて、すみっコのことを言っているようで、それも本当に嬉しかったです。実はキャラクターデザイナーのよこみぞさんと、弊社で『すみっコぐらし』を担当しているデザイナーがBUMPの大ファンだったんです。BUMPにお願いできると決まったときは、「すみっコたちよりも先に自分たちの夢が叶っちゃった」って言ってましたね。二人の夢を叶えることができて、私としても幸せな出来事でした。

 

(第二回に続く)

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