第1回/『2gether THE MOVIE』展開の舞台裏

2021.07.09

インタビュー・文:横川良明

<全3回>
第一回
第二回
第三回

タイから発信された1本のドラマが世界へ広がり、ついに日本の映画館で上映される。そんな奇跡が、今起きている。

昨年春、男子大学生の恋と青春を描いたタイドラマ『2gether』が世界中でブームに。SNSを発火点にその熱は広まり、日本にも『2gether』旋風が上陸。主演のブライトとウィンが表紙を飾った雑誌は飛ぶように売れ、テレビでも度々特集が組まれるなど、大きな盛り上がりを見せた。

そのボルテージは年をまたいでも冷めることはなく、2021年6月4日から映画『2gether THE MOVIE』が世界最速公開。映画館にはファンの列が並び、1年以上に及んだ『2gether』フィーバーは、ひとつの到達点を見た。

この劇場公開を陰で支えたのが、アスミック・エースの社員たちだ。1本のドラマがスクリーンへと展開していくその裏側にはどんなドラマがあったのか。宣伝やグッズの企画を手がけたOとT、そしてタイ本国との交渉役を担ったIに、全3回に分けて話を聞いていく。

 

――まずはみなさんが『2gether』を知ったきっかけからお話を聞かせていただけますか。

O 去年の3月ごろに、ファンの方が面白い作品があるから観てほしいという布教ツイートをされていて、それがものすごくバズったんですね。私もそのバズツイートで『2gether』のことを知って。観てみたら、なんて面白いんだと一気に沼にハマりました。

T 私もそのバズツイートは見ました。ただ、私の場合はOさんとは逆で。もともとアニメやマンガが好きで、よくBL漫画も読んでいたんですけど、実写BLに関してはあんまりいいコンテンツに出会えた経験がなくて。今だから言える話ですけど、ちょっと半信半疑なところがあったんです(笑)。

だからそのバズツイートをきっかけにタイムラインの腐女子たちがハマっているのも見てはいたんですけど、若干斜めに見ていたというのが正直なところでした。それを沼に叩き落としたのがOさんで…。

O あまりにも面白すぎるから、とにかくいろんな人に観てほしくて。Tさんをはじめ、社内のいろんな人たちに声をかけて、毎週時間を決めてオンライン上映会をやったりしていました(笑)。

T その結果、私もどっぷりハマってしまったと。

O 地道な布教の成果が出ました(笑)。

――そこまで2人を夢中にさせた『2gether』の魅力とはどういうところでしょうか。

O 個人的な話になるんですけど、私は舞台が好きで、日頃からよく観に行ってたんですね。それが緊急事態宣言によってどの舞台も公演中止になり、手持ちのチケットがただの紙切れになってしまった。そういうこともあって、外出自粛期間中はあまり明るい気持ちにはなれなかったんです。

そんな私の気持ちを明るくしてくれたのが『2gether』でした。作品としての面白さはもちろん、家にいながらいろんな人とつながって、一緒に盛り上がることができて。そうした楽しい体験ができたことが大きかったですね。

T 私は周りの世界の描き方に感動しましたね。よく実写BLで「禁断の愛」とか「性別を超えた愛」というキャッチコピーが使われますけど、私はそういう言い方が苦手で…。それもあって、実写BLに対して拒否反応があったんです。

だけど、『2gether』はまったくそんなことなくて。男の子同士の恋愛を自然なものとして描いて、周りもそれを自然に受け止めている。そこがすごく素敵で、Oさんに誘われたのがきっかけですけど、その日のうちに3話まで一気に観るぐらいハマりました(笑)。

O 私はそこからどんどんタイドラマ全般が好きになって。タイ語もちまちま勉強しはじめています(笑)。

――すごい!

O オンライン講座を受けはじめて。あのウニャウニャにしか見えなかったタイ文字が今では「こういうことを言ってるぞ」となんとなくわかるようになりました(笑)。

――そこから『2gether』の劇場公開をアスミック・エースが関わることになったのは、どういった経緯があったのでしょうか。

O 経営層の間でもアスミック・エースとして何かできることはないかという話になり、映画化の企画書をつくって、GMMTV(『2gether』を制作したタイの放送局)にコンタクトをとることになりました。その窓口となってもらったのがIさんです。

I 私はアスミック・エースに2019年に中途入社しまして。入社以来、国内プラットフォーム・セールス向けの海外コンテンツ買付と、それに付随する海外窓口業務を主に行ってきました。今回の『2gether』でも、OさんやTさんの要望をまとめて、それをGMMTVの担当者に提案し、交渉するという業務を担当しています。

O Iさんを通じてGMMTVにアプローチしたところ、先方としてもドラマシリーズの終了から1年が経過したタイミングで、これまで応援してくれたファンのみなさんに何かプレゼントとなるものをお届けしたいという気持ちがあったらしく。両者の意向とタイミングが合致したこともあって、今回の劇場公開を任せていただけるとになりました。

――ドラマシリーズとして親しまれた『2gether』を映画にしたいと思ったポイントはどこだったのでしょうか。

O 先ほどお話しした通り、私自身、『2gether』を通じて、いろんな人と知り合えて、一緒に盛り上がれたことが楽しかったんですね。ああいう体験をもっと広めていくには、みんなが同じ場所に集まれる映画がいいのかなと。『2gether』がもたらしてくれたハッピーな体験をより多くの人に広げたいという気持ちが、一番の理由です。

T 私はハマった作品なら何回でも映画館に通うところがありまして。それこそ『2gether』の前は某インド映画の民だったんですけど(笑)。その映画では絶叫上映というのをやっていて、それがすごく楽しかったんですね。応援上映スタイルのアニメ映画もよく観に行きましたし。

映画になることで、ああいった楽しみが『2gether』でも味わえるなら、それってすごくいいことなのではと思いました。

それに、『2gether』が日本で広まって1年以上経ちましたが、長引くコロナ禍もあって、いまだに大々的にファン同士がどこかの場に集まって、みんなで騒いだり楽しんだりということができないままでいます。でももし映画として公開されたら、みんなが劇場という場に集まることができる。

従来の応援上映のように掛け声をあげたりすることはまだできないけれど、『2gether』を愛する人がこんなにもたくさんいるんだと感じることができる。そういう場をつくりたかったというのも、今回の映画化に託した想いのひとつですね。

I ただ、今回の『2gether』に関しては、アスミック・エースとしても特殊なことが非常に多かったんです。当社ではこれまで多数の洋画作品を取り扱ってきましたが、タイの権利元との取引は初めて。今まで私たちが持ち合わせていたスキームが通用しない場面がたくさんありました。

O もうひとつ特殊だったのが、私とTさんが宣伝まわりを担当したことです。と言うのも、私たちは2人とも2012年にジュピターテレコムに新卒入社して、それぞれ別々のタイミングでグループ会社であるアスミック・エースに出向してきたんですけど。

T これまでやってきたのは、J:COMオンデマンドの編成調達や予算管理、視聴者分析といった業務がメインで。

O アニメの宣伝はやったことがあるけど、映画の宣伝は今回が初めて。何もかもが未知数というところからプロジェクトが走り出していきました。

――『2gether』がくれたハッピーな体験をもっと多くの人に届けたい。そんな想いから始まった『2gether THE MOVIE』プロジェクト。
公開に向けて3人はどんなアクションを起こしていったのか。第2回で深掘りします。

全国29館で一斉開催した「2gether THE MOVIE」“無発声応援上映”の様子

 

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