第1回/『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』大ヒットの奇跡

2020.02.14

2019年11月8日に全国公開された劇場版アニメ『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』。アスミック・エース配給の本作は、現在キャラクター業界で高い人気を誇る「すみっコぐらし」初の長編アニメ化作品だ。

7周年を迎えた人気キャラクターをどうアニメーションで動かすか。どうしたらファンの人たちに受け入れてもらえるのか。本編製作から宣伝まで、この作品に関わったスタッフたちのインタビューを通して、映画大ヒットの秘密を探っていく。

第1回目は、アニメーション制作を担当したファンワークス代表であり、作品エグゼクティブプロデューサーを務めた高山晃。そしてプロデューサーであるアスミック・エースアニメ企画部の竹内文恵。キャラクタービジネス全般を管理したアスミック・エース ライツ事業推進部の有吉篤史の3人に、プロジェクトの経緯から話を聞いた。

――大人気キャラクター「すみっコぐらし」が、誕生から7年を経て初のアニメ化となった『映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ』。TVアニメなどではなくいきなり映画だったので驚きました。

有吉 オリジナルのキャラクター開発及び文具、雑貨などの製造販売もされるサンエックスさんが、「たれぱんだ」「リラックマ」に続くキャラクターとして7年前に生み出したのがこの「すみっコぐらし」です。2018年にはその年で一番話題になったキャラクターとして、「キャラクター大賞2018」に選ばれたほど多くのファン層を抱えていたキャラクターが、初の本格的な映像化となったのが本作です。以前にもサンエックスさんが1分ほどの簡単な紹介アニメを作られたりはしていたんですが、今回約66分という長さで、しっかりとしたストーリーや世界観を付与して映像化するのは初めてのチャレンジでした。

――実際ここまでヒットすることは予想していたのでしょうか。

有吉 私はキャラクタービジネスを長くやっていますが、「すみっコぐらし」はもともと原作の漫画があるとかではなくて、キャラクター自体の可愛さや世界観みたいなものにしっかりと根強いファンがついていて、それはそれとして確立されている。つまりぬいぐるみなど、様々な商品からファンに浸透していったキャラクターなんですよね。そういう意味ではファンベースは強固なものではありつつも、その一方でファンの方々は、果たしてそんな「すみっコ」たちの映像を見たいのか?そこは私たちも最後の最後まで不安な部分でしたが、我々の想像を大きく超えて、興行収入14億円を突破し、社会現象化するとは思いもよらないものでした。

――では、それほど大人気キャラクターである「すみっコぐらし」が、誕生から7年を経てからのアニメ化となった理由を、製作サイドのお二人にも伺えればと思います。高山さんは、「すみっコぐらし」の劇場版アニメ化を打診された時、どのように感じましたか。

高山 「すみっコぐらし」は、キャラクター業界の中ではものすごく人気があるのに、まだアニメ化がされていない作品だったので、お話を伺った時は「本当にそれやるんですか。うちでいいんですか」と驚きましたね。当社は短編もののキャラクターアニメーションをたくさん作っている一風変わった会社なんですが、企画の立ち上げから入って、キャラクターの成り立ち、世界観、キャラクターのルックのポイントなど、じっくりお話しさせていただくことが多いんです。今回もサンエックスさん、アスミック・エースさんと共に立ち上げから関わることになりました。

竹内 企画が立ち上がったのは「すみっコぐらし」が5周年の頃だったんです。「7周年に向けて、ファンの方達のためにスペシャルな体験を提供できないか」ということで、ファンワークスさんとサンエックスさんと3社で話し、企画を立ち上げたとも言えますね。

――サンエックスさんは「すみっコぐらし」の映像化についてどう捉えていたんでしょう。

竹内 サンエックスさんはキャラクターを長く大事に育てられる会社さんです。メディア化って、瞬間的にはすごく広がるけど、広がり方によってはどれだけ成功しても、キャラクターの寿命を縮める可能性も持っている。そのあたりはすごく慎重で、さすがだなと思いました。今回は、記念の年に公開する映画というかたちなら、ということで、アニメ化がスタートできました。

――すみっコたちをアニメーションで動かす上でも、サンエックスさんから要望があったのではないですか。

高山 私からサンエックスさんにお願いして、最初から一緒にチームになっていただき、一緒に作ってもらいました。私たちアニメーション制作の立場としては、すみっコのキャラクターたちをどう動かすかがすごく重要でしたし、誰も動くすみっコを見たことがないですからね(笑)。

――最初からサンエックスさんに入ってもらい、どういう風にすみっコを動かすかを決めていったんですね。

竹内 最初に高山さんがそう言ってくださって、本当によかったと思っています。今回は3DCGで動かしつつ、見た目は本当に柔らかい絵本のタッチに見せるという方法でやってくださっています。その3Dチームにも最初から会議に入ってもらいました。アニメーション的にこういうことをできますよと伝えることで、脚本家の方が「それ面白くできそうですね」とアイデアが膨らむ。そうやってストーリーを作っていったんです。

高山 今回は3Dと2Dの両方を使っています。キャラクターにはリグという骨のようなものが入っているのですが、伸縮性のあるリグを入れたんです。そうすることで、動きに合わせてポヨポヨ動ける。これを作画アニメでやると、カットごとに全部揺らさないといけないので、とても大変です。さらに「すみっコぐらし」の場合は、そこに手描きの温かみも必要になる。キャラクターデザインの横溝友里さんは手描きですみっコたちを描いていますからね。サンエックスさんのデザインチームの方達ともやりとりして、可愛い見た目にすることを重要視しました。結局、2Dか3Dかの差異が全然わからないところまで作り込みました。

――「すみっコぐらし」のアニメ化が発表された時、すみっコたちに声がつくことを危惧する反応が多かったそうですね。結果、すみっコたちはしゃべらず、ナレーションがつくという形になりました。

竹内 キャラクターがしゃべらないことは早い段階から決まっていたんですが、60分の映画を作る上でセリフがないのは難しいと感じていました。でもサンエックスさんは「やっぱりしゃべっちゃだめなんです」とおっしゃっていて。私たちも、「その気持ちはすごくわかるけど、全国100館以上で公開する商業アニメでしゃべらないって無理かもしれない」とずっと悩みましたね。でも、サンエックスさんがブレずにいてくださったお蔭で、しゃべらないことを前提に考えた結果、新しい方法を開発できたんです。

――井ノ原快彦さんと本上まなみさんによるナレーションですね。

竹内 はい。話し合っている中で、ツッコミ型のナレーションと絵本の世界でのナレーションの2パターンを入れるという案が出ました。単に状況説明されてるだけだと、本当に眠くなってしまう(笑)。その対策としてナレーションにも工夫が必要なんじゃないかと。ナレーション内容もそうですが、映画化するにあたり、優しさとユーモアとネガティブさの匙加減が肝になるだろうと考え、こういう内容が得意であろうヨーロッパ企画の角田貴志さんに脚本をお願いしました。さらにナレーションが井ノ原さんと本上さんに決まり、音楽がついて、主題歌が決まって。そうやって固まっていくことで、作品もどんどん面白くなっていきましたね。

高山 今回のアニメーション製作は、「映像制作の行間」をどうやって埋めるかという作業を映像尺の60分間、かなり丹念にやりました。桃太郎のシーンに三味線の音が入ることで笑いが取れて、僕らもちょっと背中を押してもらえる。さらに井ノ原さんと本上さんに入っていただいたことで、作品のアウトラインが見えた。そこからはもう調整の作業でしたよね。本当はもっとたくさん喋っていただいたんですけど、特にクライマックスは映像に集中して観てもらいたくて、かなり間引いているんです。

――作品世界を絶対に守ろうとした結果、ナレーションも間引いて、それが大人も子供も感動するものになったんですね。(第2回に続く)

映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ:作品詳細はこちら
©2019日本すみっコぐらし協会映画部

インタビュー・文:大曲智子