中国公開&中国リメイク契約も決定! 映画『君と100回目の恋』が誕生し、海を越えるまで【第3回】

2017.12.28

*インタビューアー:上田智子 *写真:秋元俊一

 

2017年2月4日に全国公開した映画『君と100回の恋』。アスミック・エースがオリジナル作品として立ち上げた本作は、監督に『黒崎くんの言いなりになんてならない』『君の膵臓をたべたい』の月川翔、W主演にmiwaと坂口健太郎を迎え、大ヒットとなりました。台湾、タイ、韓国で公開されるのと同時に、外国映画の輸入本数に上限があるため参入が難しいとされる中国でも公開、さらに中国でのリメイク契約も決定。10代を中心にグローバルな支持を得た『君と100回目の恋』が「できるまで」と、「中国公開&中国リメイク契約の快挙」、「月川翔監督との仕事」を、全3回でお送りします。

 

 

【きっかけは『ソラニン』のメイキング】

映画『君と100回目の恋』のメガホンを取ったのは、恋愛映画の新たな旗手・月川翔監督。近年『黒崎くんの言いなりになんかならない』(2016)、『君の膵臓をたべたい』(2017)、『となりの怪物くん』(2018)と監督作の公開が続くが、今作のオファーを受けた当時は、ショートフィルムやミュージックビデオが高く評価され、メジャー作品としての長編映画にはまだ挑戦する前だった。

月川「『黒崎くんの言いなりになんかならない』の撮影に入る前ぐらいの時期にお声がけいただきました。長編映画は、アイドルの映画(『きっかけはYOU!』)とか、マキタスポーツさんと池松壮亮さんの『この世で俺/僕だけ』などを撮っていましたが、メジャーな作品はまだやったことがないタイミングでしたね」

井手陽子プロデューサーは、月川監督とタッグを組んだ理由について、こう語る。「月川さんが撮った『ソラニン』のメイキングがとてもよかったんです。音楽映画のメイキングとして、音をすごく意識して作っている感じがしましたし、いい意味で役者さんたちがとても生々しかった。それで、この人と音楽映画を撮りたいと思いました。『人柄が良い』とも聞いていましたしね(笑)」。

『ソラニン』は2010年に公開したアスミック・エース制作・配給の作品で、三木孝浩監督が初めて手がけた長編映画。三木監督は、月川監督が所属する事務所の先輩でもある。「もともと僕は、東京藝術大学大学院の映像研究科を卒業したあと、映画を撮りたくて事務所に入ったんです。一番最初の仕事は、ディレクター・三木さん、アシスタント・僕で、行定勲監督の『クローズド・ノート』のメイキングを撮るというものでした。その後、三木さんが『ソラニン』を監督することが決まり、『ぜひメイキングを僕にやらせてください』と現場に入らせてもらったんです。他にも、三木さんが撮ったミュージックビデオの編集を何本か担当させてもらって、フレーム単位までこだわる編集を教わりましたね」

月川監督が撮った『ソラニン』のメイキングには、クライマックスのライブシーンをミュージックビデオ風に編集した特典映像が収録されている。「ささやかな」「ソラニン」という楽曲を、キャストが2曲続けて演奏した場面だ。「映画本編にはライブシーンに回想が挿入されているんです。回想が入ることは脚本の段階から決まっていたんですけど、役者さんのお芝居のテンションを保つために、撮影のときは途中でカットをかけずに全部演奏していた。その10何分の演奏シーンを撮って、MV風の映像を作りました」。

その経験は『君と100回目の恋』の終盤にあるライブシーンに受け継がれた。演奏シーンだけをその場の臨場感と共に切り取ることで、登場人物の気持ちと音楽がエモーショナルにシンクロする屈指のクライマックスとなっている。
月川「『ソラニン』で作ったMV風の演奏シーンで僕は感動できていたので、こういった感じのものを、自分の映画の本編で見せきりたいなというのがあったかもしれません」
井手「最後のライブシーンに回想を入れないということは、最初から決めていました。この映画には“今を生きる”“この瞬間を大事にする”というテーマがあるのに、過去を振り返るのは違うと思うし、せっかく生の演奏が目の前にあって、そこに気持ちがあるのだから、そのまま撮りたかったんです。演奏シーンだけで見せきれるんじゃないと思えたのは、私自身、『ささやかな』のMV風映像が大好きだったからかもしれないですね」。

 

 

【濃すぎる打ち合わせにびっくり】

月川監督にとって、今作はアスミック・エースとの初仕事。まず驚いたのは、脚本打ち合わせの長さと濃さだったという。最初のプロットを捨てたあと、月川、大島(脚本)、井手の3人で部屋に籠もり、1週間ほどで新しいプロットを書きあげたときのことを、こう振り返る。「オリジナル作品だからということもあるかもしれないですけど、まぁ~、打ち合わせが濃い!(笑)。物語を作るということへのモチベーションがすごいんです。一般的には、プロデューサーの仕事、監督の仕事、脚本家の仕事、っていうそれぞれの役割分担があるんですが、今回は『全員でやるぞ!』っていう感じがありました。ずっと文化祭の準備をしているような感じでしたね。『今日も夜までかかっちゃったね』みたいな(笑)」

脚本の打ち合わせでは、3人で延々と「あの漫画、あの映画のシーンはキュンとくるよね。甘酸っぱいよね」という話をした。月川監督が特に参考にしたのは、ラジオ番組の一コーナー。「もう終わってしまったんですけど、高橋芳朗さんの『HAPPY SAD』というラジオ番組に『甘酸(あまず)ミュージック』というコーナーがあったんです。『こんな男の子と女の子がいて、こういう話がありました。そのときにピッタリの音楽はこれです』というような、ちょっとした妄想話のコーナーで。ストーリー性があるわけでも、オチがあるわけでもない、ささやかな描写なんですけど、とっても素敵だったんです。『僕が良いと思ったのはこれです』って、3回分の話を大島さんと井手さんに送ったりしました」。

そうしてできあがった物語は、海を渡ってあらゆる人たちに共感されることとなった。
月川「タイの監督から『泣きました』と言われたときは嬉しかったですね。人はいずれ死ぬというタイムリミットがある中で、お互いにどういう時間を過ごすのか?という葛藤は、どの国の人にも同じように刺さるんだなあって思いました」
井手「海外を意識して作っていたわけではないのですが、今までにない映画を作りたい、日本以外の人にも伝わればいいなあとは、脚本打ち合わせのときからみんなで話していましたね。映画の軸となるアイデアを、最初から3人で共有できたのもよかったと思います」

予告編とは別の、プロモーション&特典用の映像は、すべて月川監督が作った。劇中で登場人物が歌う「アイオクリ」は、ショートバージョン、ロングバージョン、撮り下ろしMV、カラオケ用映像の4パターン。主題歌「君と100回目の恋」は、DVD特典用のMVを撮り下ろした。「こういう宣伝物を、監督が全て作るのはめずらしいかもしれないです。僕もやりたかったですしね」と月川監督。井手は「月川さんはもともと素敵なミュージックビデオをたくさん撮っていらっしゃっているので、頼まないという選択肢はなかったです」と語るが、これも今作ならではの試みだった。

 

【一緒に「ものづくりしてる感」がある会社】

せっかくなので、月川監督の思う「アスミック・エースらしさ」について訊いてみた。「『作りたいものを作っている』というイメージがありますね。映画会社の皆さんは、会社としてヒットさせなきゃいけないという気持ちと、本当に作りたいものを作るという気持ちを両立しながら映画を作っていると思うんですけど、作りたいものを作るという成分のほうが多いのがアスミック・エースじゃないですかね(笑)。情熱がすごいし、一緒に『ものづくりしてる感』がすごくありました」。

では、アスミック・エースで印象に残っている映画は?「まずは『ソラニン』ですよね。あと、スーパーカーの音楽が鮮烈に響いてきた『ピンポン』(2002)。古くは『トレインスポッティング』(1996年)。やっぱり、アスミック・エースには“若者カルチャーを背負っている”というイメージがあります。特に大好きなのは、『her/世界でひとつの彼女』(2013年)。映像の色合いといい、光の感じといい、少なからず影響を受けています」。

井手いわく「決して自己満足ではなく、誰かにちゃんと届けるということを主眼において映画を作ってくれる」月川翔監督。来年公開の『となりの怪物くん』以降も、いろいろな企画が控えている。「これからも映画を撮り続ける予定です。時代やそのときの気分によって撮りたい映画の興味は変わりますが、またいつかアスミック・エースと映画を作りたいですね。情熱的で、かなりエネルギーを使いますけど(笑)」

 

▼『君と100回目の恋』について

出演:miwa 坂口健太郎
竜星涼 真野恵里菜 泉澤祐希 太田莉菜 大石吾朗 堀内敬子/田辺誠一
監督:月川翔(『黒崎くんの言いなりになんてならない』) 脚本:大島里美(『ダーリンは外国人』)
製作:「君と100回目の恋」製作委員会  制作・配給:アスミック・エース

彼女の運命を変えるため100回人生を捧げようとした彼と、
彼の1回の未来を守るため自分の運命を決めた彼女の物語。
日本中が<一途男子>に恋をする!歌姫の想いに、奏でられるラブソングに涙!時をかけめぐる純愛映画。

公式サイト:http://kimi100.com/